身體知(身体知)5

剣道と剣道形

尾崎 健次

 なぜ、剣道の昇段試験に剣道形があるのか?試験の前に、取って付けた様に間に合わせるのは、余分な負担であり、剣道の面白さを損なう…と。そのような疑問を持っている人は、残念ながら、剣道技能の習得にとっても効果がないし、何よりも、武芸習得の面白さが分からない人である。

 形も剣道の実技と同じように、剣の理法が要求される。軸のしっかりしたどっしりとした姿勢、構え、間合い、滑らかな足捌き、体捌き、真剣そのものの剣捌き。これは剣道そのものの理合いである。剣の修業を積んだ身体感覚の優れた者は、どちらをとっても優れていない者はいない。

 なぜそれが結びつかないのか?剣道に対しては、勝敗の重視のし過ぎであり、いちいち形のことを考えていてはまどろっこしいのであろう。形に対しては、たたき合いというのはあまりにも殺伐としていると言うことだろう。両者、牽制し合って、離反してしまう。

 本来、補完し合うべきものが結びつかないというのは、認識と想像力の欠如だろう。剣道の大事な軸と呼吸は、形の真剣な繰り返しによって根本から習得できる。逆に、形の迫力は実践に対するリアルな想像力に係っていると。両者の結合、練り合わせが演武の奇跡、感動を生み出す。

 形の練習は面倒くさいと思っている人、いろいろな人と相手を変え、緩急強弱の変化をつけ、心と体、心と剣、自分の心と相手の心とのコミュニケーションを楽しんでみてはどうでしょうか?最近の碧南剣連も形が重視されて、いい傾向だと思います。今度の形大会に参加される皆さんも、このような気持ちで演武されてはどうでしょうか?

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